2009年05月23日

チャイルド44

「レオ、わたしにはもうひとつ秘密がある。わたしはあなたに恋してる」(305)



「チャイルド44」  トム・ロブ・スミス 田口俊樹・訳   ☆☆☆☆☆


スターリン体制化のソ連。
国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。
だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。
そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた。
もしかして、あの事件も殺人だったのでは、という思いに駆られたレオは、
凶悪犯を認めないという国家の理念に背き、捜査を開始する――。

今作は、彼の地に実在し、12年間に渡って実に52人も殺害した連続殺人犯に着想を得ている。
犯人が12年も逃げ延びることができ、堂々と殺人を犯していたのは、
偉大な革命を成し遂げた理想の国家ソ連には、“犯罪は存在せず”、あってはならないものであったためだった。
“貧困と欠乏がなくなれば犯罪もなく”なり、
そうしたユートピアが実現されるまでの人民の“恐怖とは強化の産物”である。
従って、犯罪は西欧諸国でしか起こりえないもので、
その犯罪を肯定することはすなわち社会主義を否定することになるからだ。


(上記は文庫のあらすじ、訳者あとがき、このミスから抜粋し、再構成しました)




このミステリーがすごい!2009年版、海外編第1位。
ということで読んでみました。
…というのが昨年の暮れの話。ちなみにこの感想を書いたのも昨年の暮れのこと。


うーん面白かった。
特に下巻の展開のスピーディさには、ページをめくる手が止まりませんでした。
最後はどういう風に収拾をつけるのかと思ったけど、案外とキレイにまとまったので良かった。
そういう意味ではやはり外国モノは比較的安心できる気がします。
映画でもそうだけど、日本のって容赦なく残酷な結末持ってきたりするから。

ただ、物語自体はハッピーエンドと言って良いんだけど、
なぁんか咀嚼しきれないというか、妙なしこりというか、後味が悪いと感じるのは、
やっぱり“社会主義”自体が救われないものだからなんだろうな。
こういうことが実際、当たり前にあったんだもんなぁ。
私は“ソビエト連邦”も“東ドイツと西ドイツ”も(実感を伴って)知らないんですよ。
プロローグのウクライナの大飢饉→カニバリズム(人食い)とか、信じられない世界ですもん。
でもそうだよね…食べるものなくなったら人間食べるしかないよね。

しかし…あらすじにある、
「狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される」
に辿り着くまでが…長えーーー!
上巻の3分の2使ってるくせに、あらすじをこんなたった1行で済まさないで頂きたい。
ということで上巻はクソ面白くなくて何度も中断したし、
「これ、このミス1位じゃなかったら絶対止めてる!щ(゜Д゜щ)」と思ったくらいなんですけど、
下巻はあれよあれよという感じでどんどん展開し、
ドキドキハラハラしっぱなしであっという間に読み終えることができました。
あと、真犯人のこととか、主人公の秘密とか、
「告白」では森口先生と桜井先生の関係に全く気付かなかったけど、
今回はいち早くピーンときましたよ。
下巻の196ページでは衝撃に手が震えたもん。

映画化されるらしいですが、なるほどこれはモロ映像化向き。
逃亡劇が「ダ・ヴィンチ・コード」を彷彿とさせられると思うのは…私だけか。
主演2人が美男美女の設定だから、誰が役をやるのかも楽しみ。

しかし翻訳本って、それ独特の言い回しや雰囲気が読みづらくて苦手なんですが、
この本もご多分に漏れず。
まあ、慣れの問題なのかもしれませんけどね。
【その他ミステリーの最新記事】
posted by ショコラニアン at 23:39| Comment(44) | TrackBack(0) | その他ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月22日

R.P.G.

この道に奉職し続けるためには、もちろん、
誰かを助けたり、誰かの役に立つために頑張り抜くという根性が不可欠だ。
だがそれだけでは足りない。
それと同じくらい、いやそれ以上に切実に、
誰も助けることができなかったり、誰の役にも立てなかったときに、
そういう自分に堪え抜くことのできる忍耐力も必要とされるのだ。(70)



「R.P.G.」  宮部みゆき   ☆☆


ネット上の疑似家族の「お父さん」が刺殺された。
その3日前に考察された女性と遺留品が共通している。
合同捜査の過程で、「模倣犯」の武上刑事と「クロスファイア」の石津刑事が再会し、
2つの事件の謎に迫る。
家族の絆とは、癒しなのか?呪縛なのか?




うーん。
率直に言うと、物足りなかったです。
題材としてすごく面白そうだったから期待したんだけど、そこまでだったかも。
もっと宮部さん特有のねちっこさ(注:誉めています)があっても良かったんじゃないかなー。

ただ父親がネット上で疑似家族を持っていたことに対する娘の怒り――
――それ以上の哀しみ、切なさ、悔しさ、絶望、思春期の中で揺れ動く父親への複雑な思いは、
揺さぶられるものがありました。
そういや携帯電話とかも出てきちゃって、まさに現代の科学を駆使してますね。

冒頭の引用文は、警察官である石津ちか子が自分に向けた言葉。
でもこれは、私がこれからやろうとしている、目指そうとしていることにも
共通していることなんじゃないかと思うんです。
そして何より、日々、友人知人と接する中でも。
posted by ショコラニアン at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 宮部みゆき(現代ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月21日

悼む人

おまえを〈悼む人〉にしたものは、この世界にあふれる、死者を忘れ去っていくことへの罪悪感だ。
愛する者の死が、差別されたり、忘れられたりすることへの怒りだ。
そして、いつかは自分もどうでもいい死者として扱われてしまうのかという恐れだ。(296)



「悼む人」  天童荒太   ☆


地に跪き、右手を頭上に上げて空中に漂う何かを捕らえるように自分の胸へ運ぶ。
左手を地面すれすれに下ろして大地の息吹をすくうかのように胸へ運び、右手の上に重ねる。
目を閉じて、何かを唱えるように唇を動かす青年――。
週刊誌記者・蒔野抗太郎が北海道で出会った坂築静人は、
死者を〈悼む〉ために全国を放浪している男だった。
蒔野は残忍な殺人や男女の愛憎がらみの事件の記事を得意とすることから、
エログロの蒔野、「エグノ」と蔭で呼ばれていた。
蒔野が個人的に開設したサイトには、醜悪で、卑猥で、
人はかくも非道になれるかという加害・被害の実体験の書き込みが全国から寄せられていた。
人の善意を信じられぬ、猜疑心の塊のような蒔野は、
静人の不可解な行動=〈悼み〉に疑念を持つ。
「そんなことをして一体何になるというのか?」
蒔野は静人の化けの皮を剥ぐべく、彼の身辺を調べはじめる――。

その頃、静人の母・坂築巡子は末期の胃癌を患っていた。
病院での治療も効果があがらず、横浜の自宅でホスピスケアを受けながら死を迎える決意をする。
幼い頃から対人恐怖の傾向があり、
他人の顔を見て話すのが難しいというハンデを背負う巡子の夫・鷹彦は、
会社を辞めて巡子の介護に専念する。
二人の娘で静人の妹・美汐も、母の病を知り実家に戻った。
やがて恋人の子供を身籠っていること判明するが、その恋人とはすでに別れたという。
そこには静人の存在が影を落としていた――。

「仏様の生まれ変わり」と言われた夫・甲水朔也を殺害し、4年の刑期を終えて出獄した奈義倖世。
身寄りはなく、行く宛てもない。
おまけに自らが手にかけた夫が亡霊のごとき存在と化し、肩口から語りかけてくるのだ。
途方にくれた倖世は二度と足を踏み入れぬつもりだった東北の町を訪れ、
殺害現場で朔也を〈悼む〉静人と出会う。
動揺する倖世に、静人は
「この方は生前、誰を愛し、誰に愛されたでしょうか?誰かに感謝されたことがあったでしょうか?」
と問いかける。
静人の真意をいぶかる倖世は、夫を殺した事実を告げぬまま、静人と行動をともにする――。

静人=〈悼む人〉と彼を巡る人々が織りなす生と死、善と悪、愛と憎しみ、罪と許しのドラマがいま、幕を開ける。

(あらすじ、公式サイトより引用)




これ、直木賞受賞作品です。
「おくりびと」がアカデミー賞を受賞したこともあり、併せて取り上げられることが多いんですよね。
私の周囲では不評だったんですが、タイムリーな話題であること、丁度貸してくれる人がいたこと、
そして周囲のあまりの不評っぷりに逆にそそられた形で手を出してみました。

私は、ちまちま読むというより、時間を大幅にとって一気に読んでしまうことが多いです。
(そして睡眠時間が削れる。。学生だからできることだよなぁ)
しかしこの本に関しては2章まで読み終えた時点でギブアップ、
中断して早2ヶ月が経過してしまったというね。
借り物で返さなくちゃいけないから「読む、読む、読むよー」と言いつつ、
全く読む気が起こらなかったのですが、
今(休校期間中)読まずにいつ読むのだ!と一念発起して読みきりました…。


さて。以上のことからもお察しかと存じますが、私はこの話、好きじゃないです。
与えられるものが一義的すぎて、私は素直に受け取れない。
小説というのはもっと多角的な見方があって、
色んな考え方が私たち読者に委ねられていても良いんじゃないかと思うのですが、
この小説からはそれが感じられなかった。
天童さんの死生観を押し付けられているような感じが否めませんでした。
(あくまで私が感じたことです。好きな方、これから読もうと思っている方がいたらすみません)

まず、主人公である坂築静人に全く感情移入ができない。
静人は亡くなった人を悼むために感情が揺れ動くことをセーブしているため、
そういう描写を逆に作者が意識したと言うこともできますが。
しかし、そもそもやってることが理解できない私にとってはなんだかもうそれ以前の問題で、
何篇読み返しても「ちーん…」という感じ。
他の登場人物もいちいち突っ込んでやりたくなるし。
あと個人的には、そりゃあこの小説のテーマなんですがから当然なわけですが、
〈悼む〉ためのエピソードがもう何度も何度も、何十と出てくるんですね。
でもそれもはっきり言って同じようなエピソードの繰り返しですから。
何がしんどいって、そこらへんが読んでて一番辛かったですね。

ただ、敢えていうならば、
静人の母親で末期癌を患う巡子(のキャラクターも好きにはなれなかったけど)の、
闘病生活やその心情に関しては丁寧に描けていると思ったかなあ。(私…何様?)
これだけ抜き取って書いてれば、別に〈悼む人〉のエピソードいらねーんじゃね?と思いました。

こき下ろしてばかりですみません。
いやでもこれ直木賞受賞作だからね、
読んで(゜Д゜)←こうなっちゃう私は感性がダメな人間なんだろうか…
とか少し真面目に悩みましたよ。
いやでもこれ直木賞なんで!(しつこい)
機会があれば読んでみたら良いと思います。
誰がどの本を読んでどう感じるかは、本当に人それぞれだと思うので。
「証し」は自信をもってオススメしませんけども。

生と死を描いたものは、説教くさくなったり、押し付けがましくなったり、
はたまた偽善的な感動ストーリーになったり、すごく難しいように思います。
それは生と死というテーマがあまりにも果てしなく、
一つの答えを簡単に見出せるものではないからかもしれません。
だからこそ淡々と描かれている話の方が心に染み入るのかなぁ。

私の死生観に多大な影響をもたらしたのは、山田詠美の「ぼくは勉強ができない」です。
中高生くらいの多感な時期に読んだ本って、
わりとその後の価値観に響いてくるような気がするのは私だけかなー。
posted by ショコラニアン at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月19日

新型インフルエンザにて、

お久しぶりです。


学校が始まりもうすぐ2ヶ月が経とうとしています。
少しだけ学校生活の紹介と近況報告をば。

同期は18人、3つのコースがあるうち同コースは14人。
年齢層は22歳〜4*歳と幅広いです。
私の心の中では現役組、浪人組、大人(社会人)組と分けています。
大人組はオトナです。アダルティです。
仲は…多分よろしいんじゃないでしょうか。
他を知らないから相対的な評価ができないけど、ゆる〜い雰囲気で良い感じ。

授業は毎日ありますよん。
やってもやっても課題が終わらなくて結構大変。
休日は大抵バイトしてます。
まだケータイ屋やってんの?ってよく訊かれるけど、まだやってます。
実は4月上旬に祖母が他界しまして、父が喪主である我が家はそっちでも色々と忙しいんですよね。
5〜8月の土日は法事で潰れることが多くて、
バイトできんわ体休めないわ気ばっかり遣うわで正直ユウウツ。

バイトと言えば、TAもやっています。
TAとはTeaching Assistantのことで、学部の授業の補助のこと。
でもあんまり補助してなくて、学部生と一緒に授業聞いて「な…なるほど!」と感心してます。
多分良いお手本じゃない。苦笑
しかし余談ですが、学部生の授業態度って今見るとありえない。
遅刻してきたり、なのにレジュメを堂々と取りにいって前で教卓の上漁ったり、
授業中にトイレ行ったり寝たり携帯いじったりおしゃべりしたり。
席についてるとわからないけど、前にいると誰が何してるか結構見えるもんなんですね。
堂々と、とは言わないまでも昔は私もしてたんだよなぁ。
勇気あるな当時のアタシ。

あとM1のメインイベントはオープンキャンパス(OC)であるらしい。
メインイベントがそれって嫌なんですけどー!
わたくしクジ引きに外れてしまい、
OC委員という言わばOCの学級委員っちゅーか運営リーダーみたいなのになってしまいました。
M2のOC委員の先輩に「超大変だよ…ふ」という意味深な笑みを浮かべられ戦々恐々としています。
事務の人に労いとしてお饅頭貰いましたけど、お饅頭一個じゃ誤魔化されませんよ…!

先週の土日は知的障害者・児のガイドヘルパーの資格研修に行ってきました。
話を聞いていたら、世話をするって言ってもその人の命を預かることと同じなんじゃ、
と自信がなくなってきました。
私のような隙のカタマリみたいな人間がそんなんやって大丈夫なのか!?
不安を抱きつつ、まあやるしかないよねとも思いつつ。


そんなこんなで、3月までのステキなグウタラ生活とは天と地ほどの差があれど、
とりあえずは元気でやっています。
…が!!!


兵庫県、大阪府におけるまさかの新型インフルエンザにて、(タイトル続き)




一週間の休校。




そしてバイト先にも出禁。





そんな私の居住地は危険地域。
街や電車ではマスクをつけた人がごった返しています。

もー大阪ってこんなんばっか!
感染者は兵庫と大阪以外にはまだ広がっていないようです。
いいことだ…いいことなんだけど、不謹慎ながらなんか敗北感があるのはなぜだ。

こんなことで休みになってしまったことと夏休みが減ると思うと決して手放しでは喜べませんが、
寝不足&課題が山積みだったので助かった感があるのも事実。
今日は2ヶ月ぶりに11時まで寝倒してやりました。

そうそう、映画「天使と悪魔」を観るために早速本を買ってきました。
「悼む人」も読むの中断して2ヶ月くらい経とうとしてるから、丁度良い機会なのかも。
今週は法事もあるし、十分体と心を休めて臨みたいと思います。
みんなわざわざ危険地域へようこそという感じですが。笑


そんなわけで臨時の休校期間ですがちゃっかり満喫しています。
みなさんも気をつけてくださいねー。
posted by ショコラニアン at 18:46| Comment(3) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月18日

時生

好きな人が生きていると確信できれば、死の直前まで夢を見られるってことなんだよ。
あんたのお父さんにとっておかあさんは未来だったんだ。
人間はどんな時でも未来を感じられるんだよ。
どんなに短い人生でも、たとえほんの一瞬であっても、
生きているという実感さえあれば未来はあるんだよ。
あんたにいっておく。
明日だけが未来じゃないんだ。それは心の中にある。
それさえあれば人は幸せになれる。
それを教えられたから、あんたのおかあさんはあんたを産んだんだ。
それをなんだ。あんたはなんだ。
文句ばっかりいって、自分で何かを勝ち取ろうともしない。
あんたが未来を感じられないのは誰のせいでもない。
あんたのせいだ。あんたが馬鹿だからだ。(447)



「時生」  東野圭吾   ☆☆☆


不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、
宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。
どうしようもない若者だった拓実は、
「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った――。




時生とは、主人公である宮本拓実の息子の名前です。
宮本時生は生まれたその時から、長くは生きられないという残酷な運命を背負わされた少年。
時生に最期のときが訪れようとしているとき、
拓実が妻の麗子に「ずっと昔、俺は時生に会ってるんだ」と告白するところから話は始まります。

仕事を転々とし、恋人・千鶴のヒモ状態だった二十三歳の拓実の前に、
トキオと名乗る少年――すなわち彼がこの拓実の息子、時生なわけですが――が姿を現します。
拓実の親戚だと言いながら付きまとうトキオを疎ましく思いつつも、
なぜか情を感じて突き放せないでいるうちに、恋人の千鶴が突然姿を消してしまいます。

千鶴に振られた現実が受け入れられない拓実は、千鶴を探し出し問い質すことを決意。
ほんの少しの手がかりを頼りに、トキオと共に大阪へ向かいます。
しかし千鶴の失踪には何やら不穏なものが付きまとっているようで……。

というお話。
ミステリーというよりは、SF?に近いかもしれません。

冒頭で、時生からすると母親にあたる麗子が
「訊いてみたかった――生まれてきてよかったと思ったことがあるかどうか。
幸せだったかどうか。あたしたちを恨んでいなかったかどうか」
と夫の拓実にこぼします。
それに対して、過去でのトキオの台詞で
「生まれてきてよかった」
というフレーズが、何度も何度も出てくるんですよね。
普通「生まれてきてよかった」なんてあんまり言わないと思うんですけど、
何度もいとおしむように口にしているのが印象的でした。
一度命を落とし生きることの尊さを知っているからこそ思わず出た言葉なのか、
未来の父へのメッセージなのか。
それがすごく切なかった。

拓実が真実を知ることや両親と向き合うことから逃げていたのは、
とどのつまり憎んだり人のせいにしていることの方がある意味楽だからで、
これは…ものすごくわかる。
自分の力で働いて生きていくってことは、自分に責任を持つことだから。
逃げ道がないのは怖い。けど、そうしなきゃ前に進めないのも確かなわけで。

東野作品はいつも最後にドッキリが待っているので覚悟しながら読み進めていたんですけど、
全然ドッキリじゃなくて、それはそれでまたやられた感が…。
最後の台詞が良かったです。泣けました。
posted by ショコラニアン at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | その他ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月16日

さまよう刃

自分たちが正義の刃(やいば)と信じているものは、
本当に正しい方向を向いているのだろうかと織部は疑問を持った。
向いていたとしても、その刃は本物だろうか。
本当に「悪」を断ち切る力を持っているのだろうか。(474)



「さまよう刃」  東野圭吾   ☆☆☆


長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。
花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躙された末の遺棄だった。
謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。
犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。
正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。
世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える――。




先日、映画「007」を見てきました。
前作どころかシリーズ一度も見たことないのに、何たる無謀。
その待ち時間に立ち読みしていて、どうしても続きが気になったので後日購入しました。

「007」の映画は、
前作で恋人を殺されたらしいジェームズ・ボンドが、引き続き敵対する組織を追う中で、
組織に関与する人物に接近している女性がその人物に家族の復讐を試みていることを知り、
それに共鳴して(?)手を貸す――という、
簡潔に言うとそんな内容でした。
ボンドの助けを借り、女性は家族を殺した人物への復讐を成し遂げ、
またラスト、ボンド自身も恋人の復讐を果たし次なる任務につきます。

アクション映画だから、そりゃもうスカッとしました。
ジェームズ・ボンドはかっこいいし、演出はロマンチック。
やっぱり娯楽はこうでなくちゃ。
そして映画を見る前に私が手に取ったこの本も、偶然ですが復讐をテーマにした作品でした。


主犯のカイジは殺されないんだろうなーということは、ぼんやりながらも想像がつきました。
カイジへの復讐を果たしてしまったら、
読者はめでたしめでたしで、そこで思考が止まってしまうから。
愛する者を奪われた憎しみを復讐で晴らしてハッピーエンド――という展開は
あくまで映画の中だけのお話で、もちろんそれは娯楽としては満足なんですけど、
実際は、復讐どころか加害者が法に守られているという現実があるわけなんですよね。
東野さんは加害者家族の視点に立った話も書いていますが、
これは被害者家族の視点に立ったもの。


苦悩の中、長峰は包丁を振り下ろし続けた。
犯人への復讐を果たしたところで救われないことはわかっている。
何も解決せず、明日も見えてはこない。
だからといって果たさなければ、より辛い苦悶の日々が待っている。
地獄のような人生が死ぬまで続くにすぎない。
愛する者を理不尽に奪われた人間には、どこにも光はないのだ。(96)



「告白」の感想でも書いたかもしれないんですけど、
私刑は社会のシステムを乱すという点において(もちろんそれ以外でも)、
司法国家では絶対に許されない行為です。
それがわかっていながらも、長峰に感情移入することを禁じえず、
彼が無事復讐を果たすことを望みながら読み進めてしまいました。

カイジのような少年は現実に存在して、
彼らは素性を明かされることもなく、法に守られ短い刑期に服して、
やがて何の反省をすることもなく社会に舞い戻ってくる――

なんとも苦い後味が残るラスト、報われない結末ではありますが、
最初から最後まで何の救いもないからこそ、確かに考えさせられますよね。
少女たちを蹂躙し死においやったカイジを狙う長峰からカイジを守る警察は、
果たして正義と言えるのか?
何のためにカイジを守るのか、正義の刃はどこを向いているのか――。

ちなみにミスリードにはまたしてもまんまと騙されました。
おかしいなーとは思ってたんですけど、まさかまさかでやられた!と思いました。
謎の密告電話をああも最後まで引っ張るとは思わなかった…。
posted by ショコラニアン at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | その他ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月15日

13日の金曜日

ご無沙汰しています。




3月某日、
その日朝起きると、両親の寝室の前に父のスリッパが置いてありました。
リビングには干しかけの洗濯物が放置されていたので、
ああ、今日は父が休みなんだなと思いそのまま私はバイトに行きました。


ところがバイト中になんとなく吐き気を催し始め、
最初は気のせいかと思ってたもののだんだん耐えられないくらい気持ち悪くなってきました。

原因を考えてみたところ、
心当たりが多すぎて全くわからなかった。

朝、数日放置していた大判焼きを食べ、
昼、朝まで放置していたサンドイッチを食し、数日放置していたレモンティーを飲み、
食後にかっぱえびせんを一袋完食。

何が悪かったんだろう…

と思いつつ帰宅すると、残業のはずの母の自転車が。


これはもしや。

しかし確かめる気力もなくリビングで横たわっていると、
パジャマ姿の母が現れ

「あんたもなんや」


そう!!
父は体調不良で休み、母も体調不良で仕事を早退していたんです。
しかも私たち3人は前日同じものを食べているので、
結局大判焼きでもサンドイッチでもレモンティーでもかっぱえびせんでもなくて←変なもん食べすぎ
昨夜のアレやな、という結論に落ち着き、
母が兄にスポーツ飲料を買ってきてくれるようメールしていたその時…



まさかの、兄帰宅。



家族全員、熱で総倒れ。






何が大変って、全員床に臥してるから看病してくれる人がいない。
スポーツ飲料飲みたい…と思っても誰にも頼めないし、お粥を用意してくれる人だっているはずがない。
家の中には確かに人がいるのに、誰にも頼れない!切ない。

私は出かけていたので化粧をしていたんですが落とす気力もないし、
最初リビングで横たわってなんかいたからどんどん熱も上がって、
ようよう部屋まで辿り着いたら力を使い果たして今度は台所にもトイレにも行けないし、
ショコラのご飯なぞ当然の如く誰も作れません。

しかもタイミング悪く「電話していい?」ってメールしてきて、
「熱あって吐き気してものすごくしんどいからムリ」って返したにも関わらず
電話をしてきて(とる私も悪いんだけど)自分の話を始める友人Rちゃん…
頼むから空気読んで。



翌日にはだいぶマシになって、母は出勤、私も無事バイトに行くことができました。

しかし私たちと兄は、その前日同じものを食べてないんですよね。
最初は食あたりかと思ってたんですけど、
兄が同じ症状を発症したので食あたり説は消え、謎のウイルス説が浮上。
真実はわかりませんけどね。

昼は嫌疑の晴れたサンドイッチをまたしても食し、レモンティーを飲みました。
その日はやっぱり、何もありませんでした。


どうでもいいけど、最近クレンジング石鹸を変えたんですが。
夜中にようやっと化粧を落として顔を見たらなんか…すごい顔が白い。
もしや美白になってる!?
わーこれホントに良いのかもーとか思ってたんだけど翌朝よーーーく考えてみたら、

美白じゃなくて蒼白になってただけでした。
私って…。



春です。
新しい環境になったり、周囲もなんとなくバタバタし始める時期です。
みなさんも体に気をつけてくださいね。
posted by ショコラニアン at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月11日

容疑者χの献身

それでも僕はあなたに打ち明けずにはいられない。
彼がどれほどあなたを愛し、人生のすべてを賭けたのかを伝えなければ、
あまりにも彼が報われないと思うからです。



「容疑者χの献身」 東野圭吾  ☆☆☆☆☆


天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、
アパートの隣室に一人娘と暮らす靖子に秘かな想いを寄せていた。
靖子は、元夫の富樫にしつこくつきまとわれ、発作的に自室で彼を殺してしまう。
警察への自主を覚悟した靖子だったが、
殺害に気づいた石神は、彼女たちを救うため、完全犯罪を企てる。
そして、靖子にこう言うのだった。
「私の論理的思考にまかせてください」
草薙刑事からの事件のあらましを聞いた帝都大学理学部の助教授、ガリレオこと湯川学は、
関係者の中に懐かしい名前が混じっていることに気づく。
帝都大学の同期生で、湯川が唯一天才と認めた男、石神哲哉だった。




当時はそれこそ超有名で、
今や映画化までされたので別に本に興味がない人でも知っているだろうこの作品。
05年の直木賞受賞、このミス1位を始めとして、その年の評判全部掻っ攫っていった本です。
多分。
まあ私でも当時知ってたくらいだからよっぽど。

でも読まなかったのはタイトルになんとなくとっつきにくさを感じていたから。
容疑者χの献身ってなんじゃい、どんな話やねん、って。
なんか難しそうだと思ったんですよねぇ。

最近ようやっと東野圭吾をぽつぽつと読み始めて、これも早く読みたかったんだけど、
その時はまだ単行本しかなくて借りるのを待ち状態。
しかし待てど暮らせど一向に借りられる気配がなく、我慢できずに結局文庫本を買いました。


有名なだけに前評判は知っていて、面白いけどとにかく後味悪いから!と聞かされていました。
なので覚悟して読んだら……

感動しましたよ私は。

トリックには感心したというか見事に騙されたというか、
いや途中ところどころで「何かおかしい…」とは思ってたんですけど、でも全然気付かなかった。
種明かしされた時に「えッッ」って叫びましたから。
家で読んでて良かった。

この作品はトリック自体もわかりやすくて良かったです。
それでいて、石神の犯罪を知ったつもりで読んでいた読者の盲点をもついていて素晴らしい。
ガリレオ先生のトリックは理系すぎて私には理解できないことも多いんで…。
短編読んでた時は、トリックの説明は大概斜め読みしてましたから(´-`;

ラストに対しては、本当に湯川の自己満足でしかないんだけど、
私も湯川に共感した側なのであれで良かったんだと思うし満足です。
ネットでさすらってみたら、案の定賛否両論あるんですね。
湯川の種明かしにより、まさに驚愕の真実が明かされるんですが、
それ以上に石神の花岡親子への愛情があまりにも深く、純粋でひむきで、胸に刺さりました。

石神の想いを汲んでやりたい。
でもだからこそ靖子に真実を伝えたい――どれだけ、石神が靖子を愛していたかを。
それによって石神が救われたのかといえば決してそうではないし、
結局何もかもが水の泡になってしまったわけで。
そこにあるのはただ湯川のエゴだけで、湯川も承知だったんだろうけど、
それでも知ってほしいという揺ぎ無い気持ちが勝ったんでしょう。
湯川がずっと悩んでたのは、石神の犯した罪に対して以上に、
石神の愛を知ってなお靖子に真相を伝えるべきか否かという狭間で苦しみだったんだろうなあと。
石神は靖子に真実を知ってもらえて良かったのでは?とは私は全く思いません。
あれだけの覚悟をしてた石神は、靖子に真実など絶対に知られたくなかったはず。
でもそれはそれで、石神の自己満足なんだよね。


あと東野さんとしては、やはり犯罪をテーマに扱う者として、
どんな事情があれ真相は明らかにされ罪は償われるべきである、という姿勢なんですよね。
例外もありましたけど。(自殺だけど他殺のまま処理しといたやつとか。タイトル忘れた)
まあ、当然っちゃ当然なんですが。

それは美里が自殺未遂を起こしたことからもわかりますが、
法で問われることはなくても犯した罪は消えないんだから、
償う機会を奪われれば余計に苦しみが増すだけなんですよねぇ。
そりゃ罪が暴かれると「手紙」や「模倣犯」みたくなっちゃうのは目に見えてるわけですが。
でもその先に荊の道が待っているのがわかっていても、なお耐えることができない苦悩…
見てる人間としたら黙ってたらいいジャンって思うんだけど、
平凡できちんとした良心を持つ人間は、自分の罪を忘れることなんてできないもんなんですよね。
なかったことにして闇雲に守ることが本人にとって本当にいいことなのか?っていうね。
特に子どもは純粋(にして邪悪だけど。表裏一体?)だから。
これは「マチベン」(NHKでやってた江角マキコ主演のドラマ)でも考えさせられたなー。


いやでも「感動したんだけど」って言った時点で「えーっ」って引かれたから、
まさかラスト1ページで泣きましたとは言えなかった。

こうなると映画が見たくなりますが、ドラマはイマイチだったらしいのでどうしようかな。
しかし石神役を堤真一って…かっこよすぎるだろ。
配役はずいぶん前から知ってたんでそのイメージで読み始めたら、
原作での描写を読んでビビりましたよ私。
私は原作崇拝の傾向があるから、原作のイメージを変えられるとちょっとね〜と思うタイプです。
「獄門島」なんて、映画じゃ犯人変えられてて目ん玉ひんむきましたから。
天才ではあっても外見的には冴えない男が、
美しい人妻に恋焦がれ全てを投げ打って守ろうとする…っていうのがまたいいのに。
堤真一はどちらかというと工藤役のが合ってそう。

あとやっぱり東野さんってロマンチストだよーって話をしてた時に、
「でも見た感じそうでもないのにね」って言ったら
「外見がロマンチストっぽいってどんなやねん」と突っ込まれました。
まあ確かに…あ、でも石田衣良はなんかそんな感じ醸し出してない?笑
posted by ショコラニアン at 19:32| Comment(0) | TrackBack(0) | その他ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月10日

告白

思春期の特徴として、ある時期、
勉強やスポーツ、芸術面などの才能が急激に伸びることがあります。
やればやるほど成果がでるので、自信がつき、さらにがんばろうと思います。
自分の才能を過信しがちになる人もたくさんいます。
しかし、有名なスポーツ選手にもスランプの時期があるように、
才能はある程度伸びたところで必ず頭打ちになります。
実は、ここからが本当の勝負のしどころなのです。
所詮自分はこの程度だ、とそのまま下降線をたどっていく人。
あせらず、結果が出なくとも努力を続け、現状を維持する人。
ここが踏ん張りどころとさらに努力し、次の上昇線に乗る人。

三年生の担任を持つと、
受験を前にして「この子はやればできるんです」と保護者の方からよく言われるのですが、
この子、の大半はこの分岐点で下降線をたどることになった人たちです。
「やればできる」のではなく「やることができない」のです。



「告白」 湊かなえ  ☆☆☆☆☆


三学期終業式当日の中学校一年生のホームルームから物語は始まる。
担任の女性教師が、ある事情から婚約者と別れ未婚の母となった自分の過去や、
教師と生徒間の信頼関係についてなど、
一見脈絡のない話を始め、遠からず教師を辞めることを告げる。
退職の理由は「あのこと」なのかという生徒の問いに彼女は頷く。
数カ月前、学校のプールで彼女の幼い娘が命を落としていたのだ。
だが話はそれだけで終わらなかった。
娘の死は事故死ではなく殺人だった、そして二人の犯人がこのクラスにいるという告発に続き、
二人の処罰を法の手に委ねる代わりに、
犯した罪の重さを噛みしめながら生きざるを得ない「復讐」をすでに行使した、
という爆弾発言が続くのだった。




第29回小説推理新人賞受賞、
週刊文春08年ミステリーベスト10第1位、
この冬、読んでおきたい、とっておきミステリー第2位、
ミステリが読みたい!09年版第3位、
このミステリーがすごい!09年版第4位。
…というデビュー作にして華々しい評価を得ている作品。

一言で言うと…すごい面白かった!!
帯のアオリ、週刊文春やこのミスの書評を裏切らない本です。
(母は「ラットマン」がいずれにもランクインしてるのを見て何で!?と憤っていた笑)
風邪で早く寝なきゃなんないのに読み始めると止まらなくなって、一気に読み終えてしまいました。


全てで六章からなるこの物語は、一人称のモノローグ、短編形式で構成されています。
各話が、まさに関係者たちの「告白」なのです。

感覚的には「長い長い殺人」(宮部みゆき)みたいなんですけど、
(同じ話を立ち位置の違うキャラクターたちそれぞれの視点から多角的に描写していく)
こういう書き方は斬新でなおかつ読みやすい。
「森口愛美の死の真相」というテーマで全て語られているにも関わらず、
章によって語り手が変わるたびに次々と明るみになる真実が読者を決して飽きさせません。
一話完結なのに、章が終わってもページをめくらせる力があります。


物語全体を邪悪さと陰湿さが支配していて、底知れぬ恐ろしさを感じさせるんですよね。
ものすごく嫌な感じ。
後味が悪いとか苦々しい気持ちになるというよりは、
憎悪と悪意に満ちた炎が静かに灯り、ひたひたと広がっていく…というような。

法の裁きではなく自らの手による復讐を誓い徐々に犯人たちを追い詰めていく元女性教師、
無神経で軽率な行動で図らずも更なる悲劇を煽ることとなったナンチャッテ熱血教師、
現実を直視することができず自分の理想を息子に押し付け続けた過保護なクレーマー母親、
その母親の期待に応えることができない劣等感から優秀な者へ依存し優越感に浸る平凡な少年、
自分だけが特別な人間だと思い込み歪んだプライドと自己愛を身に纏った孤独な少年……。

しかし何よりも恐ろしいのは、残された2年B組の生徒たちなのかもしれません。
身近な死を目の前にして興奮し、
さらにクラスメイトが殺人を犯したことに恐怖するどころか好奇の目を向ける残酷さ。
不気味に思う気持ちも慣れればゲームの対象になる。
子どもって時として大人よりも惨いことを平気でできるんですよねぇ。
イジメって何だろう…
この物語のテーマからは外れますが、そんなことをふと考えさせられた話でもあります。

“虫の視界”(本家知ってる人はそちらを参照のこと)ではありませんが、
私たちは今自分が見ているものが世界の真実であるということになんら疑問を持ちません。
でも実際は、見たいものだけを見ているんです。
この登場人物たちも全員同じ。自分だけのレンズで世界を見ているのに、
それが宇宙の理であるかのように当然で、自分だけが正しいと思っている。

でもね、いるいる、こういうヤツ!みたいな、妙なリアルさを感じるのは私だけではないはず。
少年犯罪への裁きというテーマを主柱に据えながら、
現代社会のあちこちに存在する歪んだ個人の感情を少なからず照らし出しているように思えます。


二章「殉教者」で何度か登場する謎のメール。
この物語の主旨には関係ないことだからか、結局最後まで送信者はわかりませんでした。
しかし結果としてこの送信者が第一章でなされた告白を隠蔽し、
イジメという残虐な感情と行為を煽動していったことは間違いないわけで…。
始めは森口先生かな?とも思ったんですが、
先生の告白には一切触れられていなかったので、多分生徒のうちの誰か。
そういうことができそう(というか思いつきそう)なのは
AVビデオの修正部分を9割取り除くことができる(笑)という渡辺くんかもとも思ったのですが、
それも後半で触れられなかったので却下。
まあ、こういうのもある意味クラスの「闇」ってことなんだろうなぁと。

科学が進んだ現代では使うことができなくなったトリックがたくさんあありますが、
現代ならではの題材も数多くありますよね。
その代表がネット。
ネットにおける最大の特徴、匿名性を利用した犯罪はもちろん現実にも数多くありますが、
最近はティーンエイジャーでのネットのトラブルも多い。
そういうのを題材にした作品も面白そうなんですが…オススメがあればぜひ。
…と話が逸れましたが。


ひとつ残念だったのは、少年Aが自らの手で殺人を犯してしまったこと。
変な言い回しになるんだけど、なんかこれによって少年Aが凡庸で陳腐になってしまったと同時に、
物語自体を包む異常さというか、そういうものが緩和されてしまったように思う。
…うーん、でも作者はそういうのも狙ってたのかもしれないな。
Aを敢えてそこに落とし込むことで、
読者が恐らく抱いていただろう(Aに対する)感情を裏切るというか、
AをBと同じ“ただの”殺人者にするというか。
これを狙ってやったんなら、やっぱりこの人すごいなあと感服せざるを得ないです。ほんとに。

あとラスト2ページの「返事が気になりますか?」がニクい!!
いや話の展開的にこうするべきなんだけど、やっぱり気になる。
真実は彼女のみぞ知る…ということで、色々な意味で続きが気になる作品ではあります。
下村一家がこれからどうなっていくのか、ということもね。

まーでも文句なし(言ってるけど)に面白い。
本当にさりげないエピソードが後に重要な意味を持ち始めて、最初笑ってたのに笑えない…。
綿密な伏線が張られているのにも、これまた敬服。
最後まで読者の予想と期待を(良い意味で)裏切りっぱなしで、驚愕のラストが待ち構えています。
なんかこう読後のドキドキ感というか、色んなものを突き抜けて爽やかにすらなれる…。


いやでもホント澱んでるよナァ。
でもね、これ本当にリアルなんですよ。
上にも書きましたけど全員が全員、実際にいますもん絶対。


いやーほんとすごい良かった。(しつこくてすみません)
次回作が楽しみです。

…一回間違えて記事消しちゃって心折れそうになったけど、
途中まではちゃんと保存しておいて良かったです。
posted by ショコラニアン at 23:56| Comment(10) | TrackBack(0) | その他ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月09日

ベガスの恋に勝つルール

「僕は勝負を避けてた
賭けなければ負けることもない」

「あなたに賭けるわ」



「ベガスの恋に勝つルール」


彼にふられたばかりのジョイと、仕事をクビになったばかりのジャックは、
腹いせにやってきたラスベガスで偶然に出会う。
意気投合したふたりはハデに飲み明かし、朝目覚めると、結婚していた。
正気に戻ったふたりは結婚を破棄しようとするが、
ジャックがジョイのコインを投入したジャックポットで、300万ドルを当てたことにより、状況は一変。
互いに賞金の所有権をめぐって醜い言い争いを始める。
結局、収拾がつかず、その決着を法廷に委ねるが…。




散々レビューされまくっているのでイマサラ感がありますが。
映画館まで見に行くのはな〜と思ってたけど
雑誌でも好評だしキャメロン・ディアスだしDVDレンタル半額だしってことで借りてみた。

ハイスピードかつハイテンションな王道ラブコメディ。
胸がキューンとしたり恋がしたいなぁと思える映画…というよりは、
ただただ元気がもらえる映画かな、と。
だってめちゃ笑いましたもん。
そして何よりキャメロン・ディアスがほんとにかわいい!!!
キュートでチャーミングでセクシーなキャメロンの魅力が満載だと思います。

計画魔で何事にも全力投球過ぎて婚約者にフラられてしまったジョイと(そのフラれ方も悲惨!)、
ルーズで肝心なところでいつも逃げてばかりいるジャックは、何から何まで正反対。
裁判所の命令で一緒に住むハメになるけれど、
二人は愛を深めるどころかお互いを陥れようと試行錯誤する始末。
思わず笑ってしまうおバカな場面が満載なんだけど、それだけじゃない。
時々垣間見える二人の弱さにも共感。

ジョイは誰かを喜ばせることが大好きで、
本当の自分は必ずしもそうじゃなくてただ喜んだ顔が見たいがために頑張ってたのに、
その姿勢を婚約者に否定されて傷ついている。
ジャックは何かに向かって面と向かい合うことから逃げ続けていて、それはありがちなんだけど、
真剣に取り組んだときに失敗して傷つくことを恐れているんですよね。
セックスフレンドから「あなたは恋人や夫向きの男じゃない」と言われ、
ジョイからも指摘されて図星ながらも傷つき、それでも一歩を踏み出すことができずにいたけど、
彼もジョイとの生活で徐々に変わり始めます。

二人は正反対でいながらきっとすごく近い場所にいて、だからこそ惹かれていったんでしょう。
憎しみ合ってのスタートだったからこそ素の自分を曝け出すことができたし、
お互いの嫌な部分を認め合い、愛し合うことができた。
恋愛って初めは結構良いところばっかり見せようと頑張っちゃうから、
そういう意味では理想の始まり方かも!?

最後、ジョイの行き先がほんとベタベタなんだけど、それも王道なので良し。
海辺でのプロポーズはステキでした。
あとクレジット前のベロベロ結婚式がイイなぁ。
でも自分はこんなの…嫌ですけど!
posted by ショコラニアン at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・メディア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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